女子大生ナナコの冒険(3)目指せ嬢王の巻 ー後編ー
こんばんは!
引き続き、私が新宿歌舞伎町で嬢王への第一歩を踏み出した(嘘つけ!)時のお話をしますよ。
〜前回のあらすじ〜
ボンビー女子大生のナナコ(21)は年末年始を実家で過ごすための資金1万円を、キャバクラの体験入店で補おうとしていた。
もちろんキャバクラというものに足を踏み入れるのは生まれて初めてである。
そこで遭遇したキャバ嬢たちは、全盛期の浜崎あゆみ、安西ひろこ、もしくは浜田ブリトニーのようにキラキラ輝く夜の蝶であった!
対するナナコは「地味・男性に近づきたくない・貧乳」というキャバ嬢として不利な条件のフルコンボである。
友達のカナちゃんはNo.3になっているようだけど(ほかのキャバ嬢たちに嫉妬されているが)果たしてナナコは無事に接客できるのか?そして無事に帰れるのか?
場末感たっぷりのキャバクラ「プレリュード」で、文字通り歌舞伎町嬢王バトルの前奏曲は始まっていた・・
前編はこちら↓
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店長に渡されたドレスに着替えたナナコ(源氏名:ミキ)は鏡の前で固まっていた。
・・・何か違う気がする。
気色悪い・・
披露宴の余興で良く見る風景
他のキャバ嬢はこうだもんね。
あゆと渋谷のマンバ(死語)くらいの差があります
ナナコが渡されたのはいわゆるコレジャナイドレスだった。どう見ても昭和の結婚式のお色直しで花嫁が着るやつである。
一体これは何年前に買った備品なのかと、私はバブルの香りに想いを馳せた。
このオレンジ色の輝く生地に、どれだけの嬢の涙とどれだけの嬢の嫉妬を染み込ませたのだろう。
・・思わず現実逃避してしまったが、こんなドレスで現れて変なキャバ嬢だと思われても仕方ないか(まあドレスだけでなく化粧も髪型もおかしいんだけど)。
今日は見習いだし許してもらえるだろう。
コレジャナイドレスを身にまとったナナコは、更衣室からフロアに出た。
嬢たちが「なんだありゃ」という変な目で見てくる。そりゃそうだ。変だもんな。
ナナコ「(見ないで!アタシを見ないで!)」
そこにはすでにお客さんが数人来ていて、嬢たちと歓談していた。
店長「よし、じゃあ今日は僕が指示するからその通りに入って」
最低限の挨拶とマナーなどの説明を5分くらい聞き、いざお客さんの元へ出陣!
店長「ちょっとよろしいですか、見習いの子が入りますのでよろしくお願いします」
店長がお客さんに声をかける。
お客さん「ああいいよー」
ナナコ「はじめまして〜ミキで〜す」
教わった通りの甲高い声の挨拶で入って行く。
これが私の100%の笑顔だ!
お客さんは2人連れ、
奥にいる金ピカおじさん(おそらく60代)が多分偉い人、手前にいる地味なおじさん(おそらく50代)はその取引先か何かのように見える。
絵に描いたようなキャバクラ
金ピカおじさんはNo.4の美女を指名し、腰に手を回して楽しそうに話している。時折「ギャハハギャハハ」と大声で笑っている。どうやら常連さんのようだ。
もう一人女の子がこの席についてくれ、この席の飲み物などの手配はやってくれるという。とても安心である。
私の役目はこの近くにいる地味おじさんとの会話らしい。よし!がんばるぞ!
地味おじさん「こんにちは」
ナナコ「こんにちは〜」
地味おじさん「今日初めてなの?」
ナナコ「そうなんです。見習いです。」
地味おじさん「そうなんだ。まあ俺は付き添いで来ているだけだから楽にしてよー」
よかった。地味おじさんは優しそうな人だ。
2人のお客さんはすでに酔っ払った状態で店に来ているため、かなり良い気分になっているらしい。上機嫌でお酒もおしゃべりも進む。
どんな会社に勤めているのか?子供がいるのか?などおじさんに聞いてみたいことはたくさんあった。しかし何を質問して良いのか、どこからが失礼にあたるか全くわからないため、言われたことの相槌を打つのみ。
地味おじさん「最近ゴルフの腕がなまっちゃってて、この間久しぶりに大会に出てみたんだけど・・」
ナナコ「大会に出たんですか!どうでしたか?」
地味おじさん「最近息子が嫁の言うことを聞かなくなってきてさ」
ナナコ「そうなんですか〜息子さんいらっしゃるんですね」
地味おじさん「そうだね。君と年齢近いかな・・・」
非常にどうでもいい会話である。これがキャバクラか。。
目つき目つき!
当たり障りのない感じで応対したが、果たして地味おじさんが楽しんでくれているかは謎である。
しかしおじさん、息子の話をし出したあたりから急に黙り込んでしまった。
ナナコ「(ど、どうしよう、何か言っちゃいけないこと言ったかな?かなり酔ってるみたいだから眠くなったのかな?)」
すると地味おじさんは、私に質問をぶつけはじめた。
地味おじさん「君は学生さんなのかな?」
ナナコ「そうです、大学生です」
地味おじさん「なんでこんな仕事やろうと思ったの?」
ナナコ「ええと・・(路銀を稼ぐためなんて言えない)じ、人生経験のためにですかねー。アハハ。。」
地味おじさん「・・・」
黙って私のことを見つめる地味おじさん。なんだろう、これまで上機嫌だったのに急にテンションが低い。するとおじさんはキリっとした表情で私に向き直った。
そして私だけに聞こえるような声でこう言った。
キリッ
地味おじさん「君ねえ・・いいかい、ここは君みたいな真面目な子が来ちゃいけないところなんだよ。」
隣では金ピカおじさんがNo.4の腰に手を回しセクハラまがいの行動をはじめた。ギャハギャハ楽しそうである。
地味おじさん「君は大学生だろう。親御さんがこんなことしてるなんて知ったらどう思うと思うんだ!」
ナナコ「(おじさん・・!)」
まさかの地味おじさんによる説教タイム開始である。きっと、息子の話をしたときに私が同世代であることに気づき心配してくれているのだろう。
すばらしきおじさんの父性。
地味おじさん「今日限りでこんなことはやめるんだ。この世界に入ったら抜けられなくなるよ?君みたいな子がやっていける世界じゃない」
ナナコ「はい・・!」
元より今日限りだけのつもりだったが。。
地味おじさんの熱い説教で感動した私はおじさんと手を取り合い、この世界から足を洗うことを決意したのである(足を洗うも何も・・以下略)
おじさんと1時間くらい話したろうか。
私は店長に呼ばれ待機エリアに連れていかれた。ずっと同じお客さんの接客をするわけではないようだ。
お客さんが増えたらまた出動ということで、しばらく休憩。
待機エリアでは他のキャバ嬢たちの冷たい視線を浴びながら(No.3のカナちゃんの友人であるせいか、私の格好が変なせいなのか)店内をぼーっと見ていた。
見ると先ほどいた席の金ピカおじさんがNo.4のお尻のあたりを触り始めた!おい!このお店はお触り無しですよ!
しかしさすがはNo.4、慣れた様子であしらっている。
No.4「もーっ社長〜!やめて〜!!」
金ピカ社長「ゲヘヘゲヘヘちょっとくらいいいだろ〜」
No.4「だめです〜!もう!」
金ピカ社長「怒られちった!(笑)」
すばらしいNo.4嬢のオヤジさばき
そう言ってまた手はNo.4のお尻のほうに(以下エンドレス)。
それを見ている地味おじさん。
・・わかっていたけどキャバ嬢の仕事ってかなり大変だぞ。さっきは説教するだけの無害なおじさん(失礼)の相手だったが、もしあの金ピカ社長に付いたとしたらエンドレスで「お触り→お叱り」のプレイをしなければならないじゃないか。
私のようなアイアンメイデン系女子にはキツイ。あんなセクハラおじさんの隣に座ったらブチ切れてしまう。
もちろんお客さんにブチ切れたりしたらキャバ嬢失格である。
うう、、もう出番無いといいな。
まだまだ閉店までは時間があると言うのに辛くなってきた。
先ほどの地味(説教)おじさんがこちらを見ている。会釈する私。
ナナコ「(おじさん、まだ私のことを気にかけてくれてるのか。ありがたいなぁ。)」
すると店長が変な顔をして私のほうにやってきた。もしかして出動?
店長「ミキちゃん」
ナナコ「はい!なんでしょう!」
店長「し、指名が入ったよ!」
ナナコ「えっ」
周りで待機していた嬢たちも若干ざわめく。体験入店でご指名をもらうというのはなかなか珍しいことらしい。
(いわゆる場内指名というやつである。店の中で気に入った子がいたら指名するシステムで数千円かかるようだ。)
どういうことだろう・・まさかキャバクラに来たどこぞの御曹司が私を見初めて・・
ハーレクインの恋愛小説のようなシチュエーションを想像しながら店長についていくと、先ほどの席だった。
さっきと同じ
指名してくれたのはさっきの説教してきた地味おじさんだったのだ。
えー!おじさん、付き添いで来てるとか言いながら指名料なんて払っていいんですかー!
ナナコ「あ、ありがとうございます〜・・」
地味おじさん「いやあ変な人の接客とかさせちゃだめだと思ってさ」
ナナコ「(お・・おじさん・・)」
私は歌舞伎町のキャバクラで、人の優しさに触れました。もうあなたをお父さんと呼びます!ありがとう!感動です。
しかしおじさんのスタンスは変わらず。
さっきと同じや・・
地味おじさん「君ねえ・・いいかい、ここは君みたいな真面目な子が来ちゃいけないところなんだよ。」
ナナコ「は、はい。」
地味おじさん「いいかい、今日限りでこんなことはやめるんだ。この世界に入ったら抜けられなくなるよ?君みたいな子がやっていける世界じゃない」
さっきとほぼ同じ説教を受けている。おじさんは酔っ払っていて、何度も同じことを繰り返す状態になってしまっていたのだ。
愛の説教は続く。
1時間経って待機エリアに戻る。すると間をおかずまたご指名が入った。本日2度目の指名である。
やっぱり店長が変な顔して呼びに来た。
・・私が指名されたからってそこまで変な顔しなくても・・
席に行くとまたまた地味おじさんであった。
まぁ今思えば、変なドレス着た貧☆乳ド素人女を何度も指名するなんて、そういう素人趣味のおじさんだったのかもしれない。
そしてまた「君のような子はこんなところにいちゃいけないよ」という内容の説教開始。
私は他のセクハラしてくるようなおじさんの相手をしなくて良いから非常にありがたいんですがね。
またもや一連の説教を聞き、待機エリアに戻る。そしてまたまた指名される。
そんな説教プレイをグルグル3回繰り返しました。
ふと金ピカおじさんのほうを見るとまだNo.4に対してセクハラ行為を行っている。
しつこいなー金ピカさん、だめですよおお触りしちゃ。
助け舟を出したいけど変なことしないほうがいいなと思い、私はセクハラ行為を黙って見ていた。
No.4に比べ、私は地味おじさんに指名されてその隣で説教を聞いているだけ。本日3回目の説教を聞きながらもとても気楽だなあと思っていた。(ちゃんと聞け!)
その時でした。
尻に違和感が。
!?
見るとなんと信頼していた地味おじさんの手が私の臀部に・・!!
もはや顔芸
あんなに私に「キャバクラで働くのはやめなさい」「変なお客さんに変なことされたらいけない」そう言って私を指名してくれていた地味おじさんが
ちょっと興奮しながら私の臀部を触っている・・
オイー!お前も触るんかい!!!
東京のお父さんよ…
ナナコ「(お、、お じ さ ん・・)」
先ほどまで”心のお父さん”に認定していた優しいおじさん。
先ほどまで私に真剣に説教していたおじさん。
・・なんか、涙が出そうだ。
私はそっと、真顔で地味おじさんの手を払いのけました。
あのときのおじさんのがっかりした顔は、忘れられません。
無事キャバクラの体験入店を済ませ1万円を手にした私。夜の蝶にはなれそうになかった。
<完>
《本日の学び》
「こんなことしちゃダメだよ」というシチュエーションに興奮する人は一定数存在する
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